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世界平和なう:それぞれのTポイント

2018/11/06(火)
こないだ植木屋をやっている親戚の仕事を手伝った。現場は戸建住宅での植木の剪定。途中でどうしても小便がしたくなったので親方にそのことを伝えると、
「うん、そしたらその辺で…」
とけっこう大きな声で言いかけた親方は急に辺りをはばかり、口をつぐんだ。そして、ぼくの肩を抱きながら裏庭に誘導しつつ、こう言うのだった。
「あのね、この業界では“ポイント”って言うんだけど…ほら、そこでさ」
指さされた所、エアコンの室外機の脇で外壁に犬がションベンひっかけたような痕跡がはっきり残っている。
「え?!…ここで?」
「そうだよ。みんなやってるよ」
「えー!!ウソだろ?」
「そういうもんなんだよ」
「へぇー、すごいな!」
こんなカルチャーショック(?)を受けたのは久しぶりだ。わくわくしてくる。
ひょっとして今ぼくはマジシャンが手品のタネ明かしをするぐらいの業界最大のタブーを暴露してるのかもしれない。もう植木屋としては二度と仕事ができなくなるぐらいの。
お金かかってアホらしいから最近は自分で庭木の手入れとかしてるけど、プロの植木屋さんに頼んだこともある。炎天下、ものすごく丁寧に雑草を一本一本抜いてくれたあの職人さんたちがこっそり裏庭で小便してたなんてなんかショック!そんなひどい裏切り行為が当たり前に横行していたなんて!!
 
・・・それにしても“ポイント”ってなんだよ(笑)あ、Tポイントか!!(Tは立ちションのT)
ともかく、郷に入らば郷に従え、だな・・・
隣近所の目がないことを確認して相撲のそんきょの姿勢で小便した。しながらも人目が気になって落ち着かない。だってもし近所の人に見られたら留守中のお客さんの耳に入るのは必定。そうなれば次回の仕事は回ってこないどころか、この地域での依頼が舞い込むことは今後ないだろう。なんてリスキーなんだ。たった一回の尿意を早く解消するためだけにそんなハイリスクをとる必要があるのか、・・・あるのか、・・・本当にあるのか?小便を切りながら、首をふりふり思った。
「いや…ない。…ないっすよ、これ!!」
みんなやってねーよ、こんなこと!アホか。っていうかやりたくないのに“権威”に従ってしまったじゃないか(笑)。
 
しかし、「こっそり裏庭で小便する」って「こんな植木屋は嫌だ」ランキングでトップに入るよな。お客さんが外出中だからまだいいけど、家にいたり、用を足した後にすぐ見られたら致命的じゃないか。そんだったら面倒でもコンビニにその都度行くだろ。あ、でも「ペットボトルに入れることもある」とも言ってた。それもちょっと世間体が悪いよね、庭でペットボトルにっていうのも歓迎はされまい。ぼくが客でそんな現場を目撃したら「ちょっと、家の中のトイレ使ってくださいよ」って普通に言うね。
だけど、工事関係者とか植木屋さんとかにトイレを使わせない、とか逆に業者さんや職人さんの方がトイレを客に借りない風潮ってけっこうあるみたいなんだよね。ぼくが小さい頃近所で道路工事かなんかやってたおっさんがピンポーンと訪ねてきてトイレ貸してというので貸したら、後から母親に「知らない人にトイレ貸さないで」と注意された覚えがある。そんなことをなんで覚えているかといったらショックを受けたからだ。トイレを我慢するってけっこう嫌な状況でしょう?ぼくは小学校で大の方を漏らしてトラウマになったこともあるせいか、人に便意を我慢させるの嫌なんだ。犬に我慢させるのも気がひける。トイレ貸しても減るもんじゃないしね。なんで貸しちゃいけないのか理解できなかったわけ。

人がたくさん通る市街地で見知らぬ通行人たちに「トイレあるよ〜、洋式ウォシュレット付きだよ〜、小でも大でもやってって〜」なんて呼び込んでじゃんじゃん貸すとかはもちろんしないよ。マナー悪い人とかつまらせる人とかいるから。まあ防犯上の理由だったり、女性的な立場からすると肉体労働者のウンコがデカそうだとか、いろいろ偏見もあるのかもしれないけど、自分の家の工事とか植木の手入れをしてくれてる人にトイレを貸さない、そのための声かけを事前にしないというのがよくわからない。自分の家では必ず工事や仕事やる前に「トイレ使ってくださいね」と声をかけることにしてるけど、職人さんの側から「トイレ貸してください」と言われた覚えがない。遠慮してるんだと思う。みんな一声かけてあげようよ、逆に貸してくれと気軽に言おうよ、フレンドリーにさ。水臭いじゃない?そんな一線を引く必要あるんだろうか。なんか、こういうのすごく日本的な暗黙のルールに思える。他の国ではどうなのだろう?
 
というわけで最後におさらいです。みなさん植木屋さんを呼ぶ時とか仕事の前には、まず聞きましょうね。はい、せーのっ、
 
「ところで、ポイントは使いますか?」

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