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世界平和なう:モンスターの告白1(連載)

2018/09/05(水)

アースキャラバンの主な支援先の一つであるパレスチナに関心を持つようになって、イスラエルがパレスチナの人々に対して行なう残虐行為、甚だしい人権侵害の実例を知ることが増えた。イスラエルの占領下にあるパレスチナで以下のようなことが起こってきたことを知ってほしい。
 
・放水車のような特殊車両でパレスチナ人居住地域に糞尿を撒き散らす。
・パレスチナ人が代々守り育てて来たオリーブの樹を1,500本抜いてしまう。
・子供が夜中に侵入してきた武装兵士によって拉致され、矯正施設に入れられて何年も帰れない(大音量を聴かせ続ける拷問や長時間の取り調べが行なわれることもある)。
・通学中の子供が10発以上の銃弾を浴びて死ぬ。よほど外圧が高まった場合を除いて加害兵士が処罰されない。罰金が課される場合、死者一人3000円程度。実刑があっても1年程度。
・「裸で家の外に出てこないと殺す」と言われた市民が裸で出て行くと、撃たれた挙げ句、装甲車で轢き殺された。
・家が突然軍用ブルドーザーで取り壊され、中に障害者がいるという訴えも無視された。中の人はそのまま瓦礫の下敷きになった。遺体は形をとどめなかった。
・妊婦が産気づいて検問所を通り病院へ行こうとするが、無駄に何時間も足止めをくい、母子共に死んだ。
・日中屋上にいた子供たちがスナイパーにより頭を一発で撃ち抜かれて即死する。(非武装の子どもと認識できていて撃った)
こういう状況を知って強く思ったのは、
「一体、どうしてこのような残虐なことを“普通の人”ができるのか?」
ということだ。
誤解しないでほしい。
ぼくは「イスラエル許すまじ」という憎悪を煽りたくて告発しているわけじゃない。もし、こうした行為の残虐さ自体に目を奪われて、いたずらに加害側を憎むだけだったら、それは彼の地の争いを激化させようと対立を煽る流れの一滴になることを意味する。イスラエル兵は休暇をもらって祖国に帰れば、家族や友達や恋人のいる、いわゆる“普通の人”なのだ。占領に参加する前からそのような行為をして当然の“モンスター”だったわけじゃない。
  
戦争について書かれた本や映画をいくらか見た経験があれば、同じような人権侵害や虐殺が古今東西あらゆる戦場で繰り返されてきたことがわかるだろう。ベトナム戦争中の米兵によるソンミ村虐殺事件、ナチスドイツによるホロコースト、カンボジアではポルポトによって、中国の文化大革命におけるもの、ルワンダ内戦での出来事、そして日本による南京大虐殺など、同じような例はいくらでもあり、イスラエルという国やユダヤ人固有の問題ではない。
他の戦場で起こって来たことを知るにつけても、同じ問いが繰り返し思い出される。いったい、戦場では、どうして“普通の人”が同じ人間にこんなことを出来るのだろう?そこにどんな秘密があるのだろう?と。
この問いになかなか答えが得られないのは、加害経験のある帰還兵の多くが戦場での体験を語らないという普遍的な現象があると思う。特に自分が人を殺したことについては出来ればなかったことにしたいだろう。たとえ、諸々の条件から自らの意志に反して強いられたことだとしても。
 
ところが、土井敏邦さんの「沈黙を破る〜元イスラエル軍将兵が語る“占領”〜」(岩波書店)を読んだら、パレスチナ人を迫害した元イスラエル将兵たちのグループで「Breaking The Silence(沈黙を破る)」というものがあると知った。(以下、BTSと略す)。これは自らの加害体験に苦しみ、勇気を持って「占領」の実態を告発しているグループだ。これまでに写真展などのイベントをしながら戦闘兵士(将兵の内、直接パレスチナ人に対処する一部の人たち)としての加害体験がどういうものであるかを周知する活動をしている。
逆に言えば、直接的加害体験がないイスラエル国民にはすぐお隣のパレスチナでの占領の実態がほとんど知られていないという現実がある。
BTSの創設者で元イスラエル軍将校のユダ・シャウールは語る。
「自分たちが抱える問題はイスラエル軍将兵に限らない、世界のあらゆる侵略軍、占領軍が抱える普遍的な問題なのです。・・・アメリカでの講演ツアーのとき、何十回とベトナム、イラクなどで兵役に就いた人たちが立ち上がって語り出しました。彼らは私が語る言葉と同じ“言語”を語り、同じ感情を語った。違った状況だったろうが、同じ“言語”なのです。私たちの言葉は“人間”の言葉だと思います。同じ世代の声です。“占領”に加担し、今、それがどういう意味を持つのかを説明しようとしているのです。」
(「沈黙を破る〜元イスラエル軍将兵が語る“占領”〜」より)
   
つい先日、BTSのような団体が学校など公の場で活動することを規制する法案がイスラエル議会を通ったというニュースを目にした。
引き続き、モンスターの謎に迫りたい。
(つづく)

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