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今日の言葉:「特攻のかけ声ばかりでは勝てるとは思えません」

2018/09/05(水)

1945年、連合艦隊司令部による作戦会議において、「赤トンボ」と呼ばれた練習機を特攻に使用することが発表された。翼は羽布張り、最大速度200キロ、対する米軍のグラマンは600キロ。
零戦でさえ成功は難しかったのに、航空部指揮官達は参謀長の言葉を黙って聞くだけだった。
末席にいた美濃部正少佐(出席者の中で最下位の飛行隊長)は言った。
 
「劣速の練習機まで狩り出しても、十重二十重(とえはたえ)のグラマンの防御陣を突破することは不可能です。特攻のかけ声ばかりでは勝てるとは思えません。」
 
さらに精神論で説き伏せようとする参謀にはこう言った。
 
「私は箱根の上空で(零戦)一機で待っています。ここにおられる方のうち、50人が赤トンボに乗って来て下さい。私が一人で全部たたき落として見せましょう。」
(「特攻長官 大西瀧治朗」生出寿 徳間文庫)
美濃部少佐は特攻の生みの親の大西中将の部下でありながら、徹底して特攻を拒否し、部下を一人も特攻に出さなかった。代案として夜間襲撃の厳しい訓練を積み、戦果の乏しい特攻に反して確実な選果を挙げた。
また、美濃部少佐はこうも言っている。
 
「いまの若い搭乗員のなかに、死を恐れる者は誰もおりません。ただ、一命を賭して国に殉ずるためには、それだけの目的と意義がいります。しかも、死にがいのある戦功をたてたいのは当然です。精神力一点ばかりの空(から)念仏では、心から勇んで発つことはできません。同じ死ぬなら、確算のある手段を講じていただきたい。」
 
具体的な策を問う参謀に対してさらに続けた。
 
「ここに居合わす方々は、指揮官、幕僚であって、みずから突入する人がいません。必死尽忠と言葉は勇ましいことをおっしゃるが、敵の弾幕をどれだけくぐったというのです? 失礼ながら私は、回数だけでも皆さんの誰よりも多く突入してきました。今の戦局に、あなた方指揮官みずからが死を賭しておいでなのか!?」
誰も何も言えなかった。
(「彗星夜襲隊 特攻拒否の異色集団」渡辺洋二著 光人社NF文庫)
 
(以上、「不死身の特攻兵〜軍神はなぜ上官に反抗したか〜」鴻上尚史著 講談社現代新書 からの孫引き、抜粋)
    
ぐうの音も出ないとはこのことだ。
なんだ、この格好良さは?こんな人がいたなんて全く知らなかった。
権力者に媚びへつらう政治家たちに聞かせてやりたい。

◎特攻に異議を唱えたのは「不死身の特攻兵」だけではなかった! もう一人の物語

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