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参加者紹介:シャンティ・つくば 福原美紀さん「この子たちのこと、神様だと思ってます。」

2017/09/01(金)
アースキャラバン東京(木場公園)のピースサイクルに参加して頂く「シャンティ・つくば」※の福原美紀さんにインタビューさせて頂きました。
 
※シャンティ・つくば…知的・精神・発達障害のいずれかを抱える人の学びと交流の場。
 
通常、障害者にとって特別支援学校高等部が一般の高校にあたり、そこを卒業すると福祉作業所や就職の進路しかない。学びを続ける進路としては専攻科があるが、全国にわずか10校程度しかないため多くの人が高卒で社会に出ることになる。
 
ハンディキャップを抱え、一般的に健常者より学びのスピードが遅く、新しい環境に適応しにくい障害者がいきなり社会に出て直面するトラブルには以下のようなものが多いという。
 
・課された仕事に生真面目に取り組み過ぎて燃え尽きる
・いじめや差別により家に引きこもる
・作業所と家の往復の単調な生活により鬱々としやすい
 
このような現状を踏まえて、支援学校の教員やスタッフ、保護者らの間に、社会に出る前に仲間たちと共に生活力や教養を楽しみながら身につける場が求められるようになった。
 
生徒は運動や調理、社会見学や様々なワークショップなどを通じて、生活力やコミュニケーション力をマイペースで養うことができる。現在同様の施設は全国で30カ所ほどだが増えているという。
 
シャンティつくば支援員:福原美紀さん(以下:福原)
インタビュアー:菱倉
 
※文中に挿入された画像はシャンティつくば利用者さんの作品です。
  
◎専攻科はなぜ少ない?
 
菱倉:早速ですけど、この「福祉型専攻科」という言葉、馴染みがないんですけど…。
専攻科っていうのは、つまり健常者が高校から大学や専門学校に進学するように、障害者が特殊支援学校高等部の次に行くところという位置づけですよね?頂いた資料を見ると、全国で10校ほどしかないと書かれてますけど、なんでこんなに少ないんでしょう?
 
福原:なんで?
 
菱倉:数としては相当に対象者がいて、ニーズもあるわけですよね。
 
福原:最近は(ニーズが)どんどん増えてますよね。文科省もお金がない。
 
菱倉:お金がない、と。やっぱり当事者たち自身が声をあげにくいから届きにくいのと、少数派であることで後回しにされてるってこともありますか?
 
福原:そんなところでしょうね。
  
菱倉:保護者さんから行政へのそういう働きかけ、「専攻科をもっと増やしてくれ」みたいなことってあったんでしょうか。
 
福原:和歌山ではあったんですけど、結局断られて※。親が働きかけてっていうのは関東ではまだないですね。まだ必要性が広まっていないので。やっぱり学校も国も就職っていう方向に向いてしまっているので。こういうゆったりした時間が必要という認識が親たちに広まっていない。
 
※福祉型専攻科の開設は和歌山県で2008年に始まった。
 
菱倉:なるほど。
 
福原:私も最初そうだったんです。実体を知ってこういうのが必要だと思ってつくりました。まず親たちの常識、考えを覆したいと思ってやってます。シャンティにいる先生たちは特別支援学校でずっとやっていて、そういう現状に対する問題意識があってやっているので、福祉型専攻科の必要性はわかってるんですが。ほとんどの先生はいまだに就職第一みたいな考えなので。
 
菱倉:すぐ就職っていう人たちはなんでそういう考えなんでしょう?
 
福原:私もそうなんですけど、高校卒業したら子どもが離れる、手が空く、子育ての終わり、っていう感覚なんですよね。その後(子どもたちが)社会に出て挫折するとか、思ってないんですけど、実際ふたをあけると全く違うんです。だからシャンティみたいなところが必要なんでよっていうのを広めてるところなんです。(特殊支援)学校の先生とかもシャンティに見学に来てくれたりするので、先生たちの間でも(福祉型専攻科の必要性が)広まりつつあるのかなと思ってます。


 
菱倉:オープンキャンパスの日に利用者さんにお話伺った中で、就職先で挫折して引きこもった方がいましたね。行き場がなくて向精神薬一気飲みとかして自殺未遂したとか。
 
福原:そうなんですよ。
 
菱倉:そんな状態だから親が気にして声を掛けてくれたりするんだけど、それも鬱陶しいみたいな時にシャンティさんがあってすごく救われた、と言ってました。
 
福原:うんうん、そうですね。
 
菱倉:人の世話になって暮らさないといけない立ち場だけど、ずっと人からケアされてるってイヤだろうなって改めて思いました。
 
福原:そうなんですよね。
 
菱倉:当事者の複雑な心境を垣間見たような気がして。
 
◎障害者だって人の役に立ちたい
 
福原:「人のためになりたい」っていうのはどんな子でも持ってますね。Fっていう体の大きい子いましたけど、彼女も人の役に立とうとする姿勢は見えたりしますね。Nさんぐらいだと「面倒みたい」とか「人の役に立ちたい」っていうのがすごくありますね。空回りもしますけどね。
 
菱倉:Nさんはなんだかすごく生き生きとしてましたね。
 
福原:Nさんは(シャンティに来て)だいぶ変わりましたね。最初は鬱がひどくて、落ちたらなかなか上がれなかったのが、最近は休むと回復してきたりとか、後は自分で調整して「もうマズいから帰る」ってできるようになったり。後は、最近はいきすぎちゃって生意気な部分も出て来たりとか(笑)。
 
菱倉:(笑)
 
福原:やりすぎ、やりすぎっていう時もあるんですけど、スタッフもみんな今はNさん伸びてる時だから温かく見守ってるんですけど。
 
菱倉:休憩コーナーで昼寝してる子がいるとか、帰りたくなったら帰るとか、利用者さん基準で運営されてる感じがすごくみなさんがのびのびとリラックスできてる秘訣なのかなって思いました。
 
福原:そうなんですよね。作業所に行くと、私から見ると本当に刑務所みたいなイメージで。もう黙々と同じ格好で同じ単純作業してるのが(見ていて)親として切なくて。それが駄目ってわけでもないですけどね、合っている子もいるので。
 
菱倉:そうですね。
  
福原:私なんか仕事してても途中でお茶したり、喋ったり、楽しみながらやってるのに、なんでこの子たちだけこんなにガチガチでやらないといけないんだろうって。反対に、(彼らは)「休みたい」っていうことがなかなか言えないんですね。
 
菱倉:自分たちから言えない?
 
福原:私たちだってズル休みしたりしますよね(笑)?
 
菱倉:しますね(笑)。またか?みたいな頻度で(笑)。
 
◎弱音が吐けて自由な言動が許されているシャンティ
 
福原:それが一切ないので、まじめにやりすぎちゃって一杯一杯になって心が折れちゃうっていうケースがよくあるんです。だから、「シャンティではできないことはできないでいいし、それは悪いことじゃない」って言うんです。「休みたければ休んでいいんだよ」って。そのへんが自由なところなのかなって。
 
菱倉:そうですね。
 
福原:そういうの言えないと簡単につぶれちゃうので。
 
菱倉:そうですね。ビジネスマンでも過労死するまでやっちゃってとかありますもんね。
 
福原:そうそう。この子たちは学校とか行ってると失敗許されない状況に置かれちゃうので一杯一杯になっちゃうんですよ。自閉気味の子ってやらせると全部やっちゃうので、ちょっとつらそうなところがある。なので、「ここでは(弱音吐いても)いいんだよ」って言うんです。
 
菱倉:その場の雰囲気なり、運営の仕方なりで同じ人でも言いたいことが言えたり言えなかったりするってことですよね。だからシャンティさんのスタイルは作業所と真逆ですよね。運営側の型に利用者がはまるのか、シャンティンさんのように利用者さん本位でやるのかっていう違いで。
 
福原:そうですね。ここにいるとみんな解放されていくっていうのをすごく実感しますね。
 
菱倉:発言がね、みなさん自由ですもんね。
 
福原:(笑)ははは。
 
菱倉:「韓国に視察に行って来てどうだった?」という質問に対して、Fさんは「つまんなかった」とか言ってましたもんね(笑)。あれには爆笑でした。でもスタッフさんが「わざとこういうこと言うんだ」って言ってましたけど。
 
福原:あの子も全然喋れなかったんです。そういう冗談を言うようになったりしてて。そういう変化が面白いですね。
  
菱倉:そうですね。何言っても大丈夫っていう安心感があって、そういう自由な言動が出てくるっていうか。
 
福原:そうですね。授業中もみんなにいろんな意見を出してもらって「それは間違いじゃないんだよ」、「いろんな考えがあっていいんだよ」って言ってるので、けっこうガチガチにこうじゃなきゃ駄目っていう利用者さんもだんだんゆるんできて「こんなんでもいいんだ」って変わって来るのが見てて面白いです。
 
菱倉:いいですね。
 
福原:たとえば、授業で「デート代は男が出すもんだ!」って言ってた人が…
 
菱倉:利用者さんですか、それ(笑)?
 
福原:そうです(笑)。そういう人がいろんな人と接する中で変わって来たりとか。
 
菱倉:ふーん。利用者さんとのかかわりの中で逆にスタッフさん、先生たちが影響を受けるっていうこともありますか?
 
福原:刺激ってことですか?
  
菱倉:世間の学校とか職場とかだとあんまりない言動が出たりするじゃないですか?感性が自由だから。


◎人はいくつになっても成長する
 
福原:先生たちはまあこれが普通ですもんね。私は普通の職場にいたので、それからこういうところに来てやっぱりあの、その子にあった場所だとどんどん成長していくっていうか、今までは抑えつけられて来た子が多いので。
 
それは親自身もそうなんですけど、“障害があるから”っていう目で見てしまうので。ここはうまく先生たちが人格を認めて解放していくので、みんなのびのびとなっていって。だから18歳とか大人でもう成長しないように思ってるけど、ここに来るとガンガン成長していく。一人一人その伸び具合というかペースとかは違いますけどね。
  
菱倉:いいですね。
 
福原:今年の四月に入った子もちょっと自閉がきつかったんですけど、けっこう会話するようになったりとか。「これなあに?」って聞いてきたりとか。「あ、会話できるんだ!?」とかこっちがびっくりして。
 
菱倉:へえー、すごい!
 
福原:その子の親もびっくりしてて。
 
菱倉:それは嬉しい驚きですよね。
 
福原:そうですね、面白いですね。
 
菱倉:確かに学生時代で基本的な成長が終わっちゃうみたいな思い込みありますもんね。
 
福原:そうですね。ここは上が39歳までいますけど、やっぱりいくつの人でも変化ありますからね。ただ二年はちょっと短いんですけど。
 
菱倉:そうですね。
 
福原:もうちょっと時間がほしいっていう意見はよくでますけどね。いろんな子がいて…今までけっこう狭い世界で生きてきた子たちなんで、特に発達障害系の子たちは。そうすると、ここで「みんな違っていいんだ」って世界が広がるみたいで。
 
菱倉:発達障害っていうことで言うと、うちの子もまだ二歳半ですけど、なんか行政の側が発達障害を早期発見、早期対処みたいな風潮があるじゃないですか?そういう子たちだけ集めて専用のプログラムを適用するみたいな。
 
福原:ちょっと落ち着きがないとすぐ弾かれちゃうんですよね。
 
菱倉:そのへんのことについてはどう思われます?
 
◎親が子どもの発達障害を認めないケース
 
福原:うーん、行政のやり方で枠に入らないと全部アウトみたいなのはどうかとは思うんですけど、ただやっぱり適切にケアしていくことで良くなる子もいるので何とも言えないです。ここにいる発達障害の子って普通高校出てるんですけど、そういう子たちってケアされてないんです。親も障害を認めてないので。
 
菱倉:グレーゾーンというか?
 
福原:そうですね。ここにきてみてみると、親が障害を認めずにケアされないで来てしまって高校卒業までいった子と特別支援学校にきっちり行った子と比べると、支援学校に行った子の方がいろんなことができちゃうんです。
 
菱倉:へえー。
 
福原:面白いんです。調理実習とかやったら切り方とかも特別支援の子の方がうまいんです。いろいろ学校に対して文句もあるんですよ。けど、基礎の生活については叩き込まれて来るので、例えばちゃんと座って話が聞けるとか。そういうのは支援学校の子の方がしっかり身に付いてるんです。なので、発達障害の子で普通の学校にいた子はあんまりケアが届かない状態だったので、自分の名前を間違って覚えてたり、バスに乗れなかったり、スマホいじってカラオケ行けるけど、生活能力はゼロみたいなこともあるんです。
 
菱倉:なるほど。
 
福原:だから一概に分けちゃうのはどうかと思うんですけど、親も心配しちゃうんで。だけど、そういうのが必要な子に対してはうまい援助が役に立つのかなっていうのはありますね。たとえば、ここにいる子でも親がその辺をわかってて特別支援に行かせていたらもっと生活能力上がったかなというのは感じます。その辺が難しいですね。
 
菱倉:まとめて制度としてやろうとすると、どっかで線を引いて分類してっていう風になりますもんね。そうするとシャンティさんみたいにそこからこぼれた人を掬いとるというか、そういう居場所があることで救われる人が多いでしょうね。
 
福原:そうですね。だから発達障害の子だけが行く場所があってもいいのかなって私個人は思います。分けるのもどうかなとも思いますけど。
(知的な)障害を持った子たちは作業所に行く道がたくさん用意されてるんですけど、発達障害系のグレーゾーンの子たちはそれがなくて保障もなかったりするので、高校卒業しても行く所がなくてやっと(障害者)手帳の申請に至るというケースもたくさんあるんです。だからかえって(障害の軽い)発達障害系の子の相談が多いということを知って驚きました。
 
◎人はみんな障害者?
 
菱倉:なるほどね。端からみて障害がよくわからないっていうケースは困るでしょうね。
 
福原:私、いろんな人見てるけど、全くグレーじゃない人ってこの世にいないんじゃないかって(笑)思ってるんですけど。
 
菱倉:ははは(笑)。究極はそうですよね。学力テストとかでは出ないですけど、「どうしても後片付けができない」とか軽いところではそんな人いっぱいいますしね。
 
福原:利用者さんを見ていて、「私も同じようなところあるけど、これってグレー(ゾーンの人)じゃないのかな?」って思うこと多々あって。そうしてみると、障害っていうより個性じゃないのかなって強く感じてるんです。
 
菱倉:そうですね。
 
◎健常者が障害者に歩み寄れば世界はもっと平和になる
 
福原:最初は私も障害のある人が健常者の世界に100%合わせないといけないって思ってたんですけど、でもみんなグレーなんだからもっと理解して私たちがこの子たちの世界に歩み寄れた方が早いし、もっと世界が平和になるんじゃないかなと思ってます。
 
菱倉:社会とか国の成熟度って、障害のある人とか刑務所から出て来た人とか広いくくりで見た少数派の人たちがどのように扱われてるのかっていうところにすごく出るような気がして。
 
福原:そうですよね。この子たちがもっと理解されて社会にどんどん出て行けたら、例えば老人ホームとかに入って行ったりしたら、すごくうまくいくんじゃないかなって私は思うんです。話し相手とかね。
 
菱倉:なるほどー。いいですね、それ。
 
福原:そうすると福祉の世界の中でもお互いにうまくまわるんじゃないかと。
 
菱倉:なんか、あれですもんね。分かれちゃってますもんね。ケアする側はこういう人たちで、ケアされる側はこういう人たちって。型にはまった感じがありますもんね。


◎自分の方がずっと助けられ、学ばされている
 
福原:韓国で見学させてもらった施設で、60歳以降の人たちと障害の人たちが一緒に働いていて。最初は高齢者の人たちが「私たちが障害者を面倒みなきゃ」っていう気持ちで退職後も生き甲斐を感じて生き生きするんですって。
 
でも、一緒に働いてるうちに「実は私たちが障害を持っている子たちに助けられてたんだ」っていうのがわかってくるんですって。それを聞いた時にすごく感動したんですけど、私も結局そうで。この子たちの居場所を作りたいって思って始めたんですけど、すごく助けられてるのは私で、学びとか気づきもすごく多いし。本当にそういうことなんですよ。
 
菱倉:そうなんですね。
 
◎この子たちのこと神様だと思ってるんです
 
福原:私、この子たちのこと神様だと思ってるんです。みんな。だからこの子たちがもっと世の中に混じれるといいなと思っています。で、私バスケットチーム持ってるんですけど、一般の方も練習に来てくれるんです。そうすると、スポーツを通してなので仲良くなるのが早くてそういうところから障害者理解が深まるといいなーと思っています。
 
菱倉:そうですよね。まず交流がないところには何も認識の変化とか、考え方の変化とかそういうものが生まれないですもんね。
 
福原:そうなんです。私、南相馬にボランティアに行ったことがあって、今は交流してないんですけど、そこの人たちが練習試合の相手に来てくれたんですね。ふつうのオッサンたちなんですけど(笑)。
 
菱倉:筑波まで?
 
福原:ええ。その時にみんな拒否してるわけじゃないんですよ。だけど、交流した経験がないので、どうやって接したらいいかわからない。で、「こういう子たちってどこにいるの?」って言われたんです。隠してるつもりはないんですけど、世の中の制度として隔離してる感じにはなるので。
 
その人たちも避けてないけど、ふだん会わないしっていう。確かにそうだなって。最初健常者側はどう接していいかわからなくて緊張してたけど、実際ボールを追いかけてみたら「なんだ普通でいいんだ」って思ったみたいで。そういう機会が増えたら嬉しいなって。
 
菱倉:そうですね。
 
(中略)
 
菱倉:Eテレかなんかで障害者バラエティのバリバラ※でしたっけ、ありますよね?
 
福原:バリバラですね。
 
※「バリバラ」(Eテレ)…2012年にスタートした障害者が主役の情報バラエティー番組。24時間テレビの裏で「障害者が頑張るのを見て面白いですか?」というセリフが聞けることからもわかるように、障害者の本音に迫る姿勢は一貫している。「障害者を健常者に感動や勇気を与えるための道具として扱う」“感動ポルノ”に対する強烈なアンチテーゼ。
 
参考:「Eテレ『バリバラ』今年は『告白』ではじけた『障害者が頑張る。面白いですか?』」(J-castニュース)
 
◎“成功した障害者”はほんの一部
 
菱倉:あれ最初見たときもすごくいいなって思ったんですけど、制作側の人が「障害者と一口にいってもよくマスコミに取り上げられるのは、「障害にも関わらずパラリンピックでメダルとりました」とか、世間でいう成功者の型にはまってる障害者ばかり取り上げられるけど、実際はもちろんそんな人ばっかりじゃない。」っていうようなことを言ってた記憶があります。
 
福原:そうです。アイドルと一緒です。そんな人はほんの一握りです。
 
菱倉:そういう人ばっかり取り上げたら、社会で挫折して家にひきこもってるような障害者はますますつらくなっちゃいますよね。成功しようがしまいが、どんどんオープンに出て交流があったらそれだけで素晴らしいと思います。
 
福原:ありましたね。二十四時間テレビみたいに感動ものの話だけじゃない(笑)。
 
菱倉:あのバリバラなんて本音というか率直な言葉が聞けてすごくいいと思って。
 
福原:ありのままの姿で私たちもアースキャラバンに行くのでよろしくお願いします。
 
菱倉:はい、楽しみにしてます。話したりないところ、これだけは伝えたいこととかってありますか?


福原:なんだろう、みんなひとつなので。この子たちを省かずにみんな一緒に笑っていけたらいいなと思うし、私は母親の立ち場でシャンティに入ってるので、お母さんたちにアプローチしていきたいっていうのが強くて。子どもと親ってリンクしてるっていうか。
 
菱倉:そうですね。
 
◎障害児は親を気遣っている
 
福原:この子たち特にお母さんたちの考えとかにすごく気を遣って生きてるっていうのをここ一年近く伴に過ごしていて感じるんです。なので、まずお母さんたちを笑顔にしていけたらっていうのがあるし、そうしたらこの子たちもすごく笑顔になる、って思います。
 
菱倉:そういうちょっと弱い立ち場の人たちの視点で考えてみたり、そういう障害者本位で施設を運営したりということで逆に世の中全体がすごく風通しがよくなったり、居心地がよくなったりしそうですよね。
 
福原:そうなんですよ。私はそこを狙ってるんですよ。私は混ぜる役をやりたいなと思っていて。私は(障害者以外の)外の世界とも交流があるので。
 
菱倉:アクティブですもんね。
 
福原:そうなんです。私は行く先々で「こういう子たちってすごくいい子なんだよ」って言って興味もってもらおうとしててめっちゃアピールしてます。どこいっても全然関係ないワークショップの席とかでも言いまくってます(笑)。
 
菱倉:どこからどんな話が来るかわからないですもんね。
 
福原:そうですね。私けっこうスピ系のワークショップ好きなので、だいたいそういうところに行くと、障害者のいいところわかってくれる人ばっかりで話が合うんですけど。
 
菱倉:本来、そんなの(障害の有無)関係ないですからね。
 
福原:私こないだバリに行った時に日本人の人を紹介してもらって、その人も発達障害で日本では住みづらくてバリに住んで絵を描いてる人なんですけど、その人が言うには、バリの人って全員って言っていいほど、みんな日本で言うところのADHD※とアスペ※持ってる人たちなんですって。
 
菱倉:えー!?
 
※ADHD…注意欠陥多動性障害。不注意、多動性、衝動性を症状の特徴とする神経発達症、行動障害ということにされている。
参考:「ADHDは作られた病であることを“ADHDの父”が死ぬ前に認める」(GIGAZINE)
  
※アスペルガー症候群…知的障害が伴わないものの、興味やコミュニケーションに特異性が認められる発達における障害ということにされている。
  
福原:だから発達障害系の西洋人とかもみんな住み着くんですって。だからうちの子、ここに住んだら普通の人じゃんって。むしろ字かけるからけっこう出来る方の人じゃんって。それを聞いた時に国によっては普通の人になれるし、うちのシャンティとかバスケチームのメンバーも半分以上の人がバリにいたら手帳なしになれる。
 
菱倉:所変われば、ですね。
 
福原:そうなんですよ。
 
◎障害者が障害者らしく生きる必要はない
 
菱倉:逆にその程度のことだってことですよね。一度その手帳持ってしまったからといって、そういう障害者としての人生(作業所と家の往復みたいな典型的な生活)しかないってわけでもないし。
 
福原:そうなんですよ。だから動ける子たちは海外とか移住しちゃえばいいんだよって(笑)。
 
菱倉:ねー!
 
福原:のびのびと暮らしてるし。仕事してる人なんて少ないし。すごくのんびりだし。日本だとすごく型にはめるので、場所が変わるだけで全然違うから。そういうことを知ると、ちょっと切ないですよね。今の扱われ方が。
 
菱倉:だからまだまだこの国にはそういう意味ではやることがいっぱいありますよね。
 
福原:そうですよね。もっと障害が認められて理解が深まれば、ここの子たちが働ける場所がどんどん増えるし、当たり前の生活が送れるのになって。
 
菱倉:そうなっていったら、今はもう少し減ってるのかな。ほら自殺者が3万人とか言うじゃないですか。20~30代の死因の一位が自殺とか、その辺の状況も変わって来ると思います。
 
福原:ほんとに障害が重い子たちに関しては、自分を生きてる子が多いので、「あ、これでいいんだ!」って、「このわがまま通していいんだ!」って。日々学びですよ。楽しいです。
 
(中略)
 
菱倉:シャンティは福原さんが助成金申請したり、中心になって始めたんですか?
 
福原:私がバスケチームを主宰してて、(自分の子の)高校卒業後のことを全く知らなかったんですけど、就労しか道がないっていうのを知った時に、せめてチームのお子さんのお母さんだけでも笑顔になれるような場所をつくりたいと思って、いろいろ調べて出かけてって、でもピンとくるのがなくって、その時にたまたま「専攻科っていうのがあるよ」、「福祉型専攻科っていうのがある」と、おすすめがエコール神戸さんっていうところだと教わって。
 
で、すぐに見学させてもらって。そこで学生さんと先生がいきいきしてて青春を送っていて、「これを絶対つくばにつくります」って言って帰ってきて、でも一人だったのでどうしたらいいかわからなかった。
 
で、今ここにいる先生たちがもう10年ぐらい専攻科が必要だと思って勉強したり、見学したりしてて「今度韓国の専攻科を見に行くけど一緒に行かない?」と誘ってもらって、それで先生たちと出会ったんです。
 
菱倉:一人じゃなかったんですね。その思いを持っているのは。
 
福原:そうです。たまたま出会って、教師だけでは力が弱いので、学校に交渉に行くのにも当事者の親の力が必要なんですよね。私は作りたかったし、「じゃあ一緒にやりましょう」って言ってあれよあれよとできちゃったんです。
 
菱倉:なんか運命的なものを感じますね。
 
福原:はい。あっという間でした。もうベテランの先生たちだから安心して預けられるし、親たちにも私が親の立ち場から広めて行けるんです。だから親の立ち場と教師の立ち場でバランスとってうまくやっていけるんです。私が親として窓口で入ってるので、話の通りがいいんです。すごくそういう苦労に共感できるので。
 
菱倉:共感の深さがやっぱり当事者とそうでない人とで違うでしょうからね。今後もご活躍が楽しみですね。どう展開していくのか。
 
福原:そうですね。
 
菱倉:どうも長いことご協力ありがとうございました。
 
福原:ありがとうございました。
 
終わり

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