週刊EC 詳細
世界平和なう:生涯最速のラン
2018/08/20(月)
海外に行くと必ずと言っていいほどトラブルに見舞われる。
それはタイのチェンマイに行った時のことだった。ついたその日にそんなに安くもないレストランで腐った肉料理に当たって入院。ここまではお決まりのコースなのだけど、その後、回復して調子に乗っていたのかもしれない。
とあるショッピングモールの駐車場で車から降りると、野良犬たちが20頭ほど群れていた。日本でもぼくが子供の頃にはまだいた、痩せて目つきのキツい野良犬たち。何の気なしにちょっかいだしてやろうと思って、勢い良くアスファルトを踏みつけて音を立てた。
群れの雰囲気が一変した。
ここから全てがスローモーションに変わる。
人間、生死に関わる極限状況においては普段は眠っている潜在能力が最大になり、感受性も研ぎ澄まされる。それが一瞬一瞬の時間の密度を濃くするから時間の経過が遅く感じられるのだと思う。
ここから全てがスローモーションに変わる。
人間、生死に関わる極限状況においては普段は眠っている潜在能力が最大になり、感受性も研ぎ澄まされる。それが一瞬一瞬の時間の密度を濃くするから時間の経過が遅く感じられるのだと思う。
止まったような時間の中で考える。
確かに威嚇と受け取られても仕方ない態度だったよな…朝晩の散歩、フードにおやつ、室内飼育で牙を抜かれた日本のペット犬とタイの野良犬を同列に見ていたのはバカだったな、我ながら…そう言えば…たしかタイって狂犬病まだあるよね…。
大脳カンピュータが瞬時に最寄りのwifi経由でネットにアクセスし、聞き取りにくい人工音声で読み上げてくれた。
“2015年8月タイ畜産省の発表によれば、タイには約850万頭の犬がおり、その内700万頭が放浪犬。放浪犬の60%以上が狂犬病に罹っている…”
数多過ぎ!!!
罹患率も異常!!
こんだけ増えるまでに対策とれよ!!マイペンラーイ(気にしない)じゃないから、全然!
確かに威嚇と受け取られても仕方ない態度だったよな…朝晩の散歩、フードにおやつ、室内飼育で牙を抜かれた日本のペット犬とタイの野良犬を同列に見ていたのはバカだったな、我ながら…そう言えば…たしかタイって狂犬病まだあるよね…。
大脳カンピュータが瞬時に最寄りのwifi経由でネットにアクセスし、聞き取りにくい人工音声で読み上げてくれた。
“2015年8月タイ畜産省の発表によれば、タイには約850万頭の犬がおり、その内700万頭が放浪犬。放浪犬の60%以上が狂犬病に罹っている…”
数多過ぎ!!!
罹患率も異常!!
こんだけ増えるまでに対策とれよ!!マイペンラーイ(気にしない)じゃないから、全然!
ここに至ってぼくの奥底で爆睡している生存本能がようやく「逃げろ!」と告げた。犬たちがキレてからここまでがたったコンマ1秒。
猛ダッシュで逃げた。
同時に20頭の野犬が猛然と追いかけて来る。
こんなに早く走ったことは後にも先にもない。たぶんインターハイ記録ぐらいは出てたはず。
こんなに早く走ったことは後にも先にもない。たぶんインターハイ記録ぐらいは出てたはず。
振り返る度に確実に間合いを詰めてくる野良犬たち。
どこに逃げよう?
どこに逃げよう?
10メートルほど先に大型のピックアップトラックが停まっているのが目に入った。
間に合うのか?
…全然間に合う気がしない。
子供の頃、野犬に追われて補助輪付きの自転車に乗って逃げた弟が尻を噛まれた時の光景がフラッシュバックした。
あと、週刊少年ジャンプで連載していた犬マンガ「流れ星 銀河」のことも思い出した。
犬同士で会話するんだよな。あれ斬新で面白かったな〜…いや、そんなノスタルジーに浸ってる場合じゃない。もう犬の足音と荒い息づかいがすぐ後ろに迫ってる。
万事休すか、と諦めかけた時だった。
ピィーーー!!
甲高い指笛が辺りに響き渡った。
走りながら辺りを見回すと、近くのトラックの荷台で喋っていた地元のおっさんたちによる助け船だとわかった。
キレた犬とてそこはやはり犬畜生。驚いて一斉に足を止め、音のした方向に注意を引かれている。
チャンス!!
その隙にトラックの荷台に駆け上った。
おっさんたちに何度も合掌して礼を言った。
「コップンカップ! コップンカップ!」
それ以来、海外では野良犬に極力近寄らない。
どうしても狭い道で彼らとすれ違わないといけない時は、沿道市民に手を振る天皇のように一切の邪念を封じ、満面の笑みをたたえるようにしている。